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ネタ帳
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「あやまりたかっ た」
後ろで人がざわめき始め、何か言っている。耳につく甲高い声。
街の効果音と混ざりとても煩い。
重力にしたがって流れる涙を
僕は必死でとめたかった。
見せたくなかった。
君なんかに泣き顔見られるなんて屈辱だ。
「あやまりたかった ん だよ ―――」
やめろ。
今更目を閉じないで。
凍った瞳をやわらげないで。
憎んだ口元で微笑まないで。
僕はひとり
馬鹿みたいにないて いた
[ wish you were here ]
---------------
ドンッ。
唐突に
音とも言い難い、鈍く耳の奥に残る衝撃が後頭部にひびく。
勢い良く前に倒れ込んだ、膝だけがなぜか無性にイタかった。
2月27日、10:28。(さっき時計見たばかりだから正確)
俺は多分きっとさっきバイトが終わって家につこうとしていたはずだ。
今は冬だから凄くさむい。息も白い。
だから急いで家に帰ろうと―――
違う…こんなこと考えている場合じゃないんだ。
予想外な突然の出来事に直面すると、人は変な方向に思考がいくと聴くが…困った。
一瞬なにがなんだか分からなかったけど、こうして頭からドクドク流れ出る
自分の血液を見ていると。やっぱり痛いかもしれない。あ、痛いや。
ついでに呼吸もままならなくて苦しいかもしれない。
どうしようやっぱり痛い…。
そんなこと頭で何度も繰り返し呟いていると、
背後から俺を殴ったであろう人物の気配がした。
ジャリ―― っとにじみよる音がする。
背筋に何かがはしる。そのときになって初めてその存在に「恐怖」をおぼえた。
俺の後頭部から紅いモノが生々しく流れ、止まることを知らない。
それでも手の甲で必死に押さえる。
倒れた時の膝の痛みを感じながら、俺は振り返った。
冬の夜空に点在する星と月がいつも以上に眩しく見えて
思わず見開いた目を細め る。
「―――――」
ドンッ
俺の視界はその音でとぎれた。
あぁ
俺の人生はこんなものだったのか
と
生きる事をあきらめた瞬間に
俺の人生などもう終わるのだ
せめて最後は笑ってやりたかった
笑い飛ばして やりたかったのに
---------------------
どのくらい時間がたったのだろう。
あれから
まっしろな世界から抜け出したとき、俺は知らない場所にたっていた。
俺が俺を見た最後の記憶そのままの格好だ。
フードにファーの着いたコート、モノトーンのジーンズは少し汚れている…何故だろう。
チャンネルが切り替わるように俺には瞬きの間のようだった。
しかし空白のような記憶の喪失感がそこはかとなく時間の経過を連想させる。
知らない場所って言ったって、まぁ、人が住んでそうな団地だけど。
取り敢えずとぼとぼと歩いてみる。結構広い…というか高そうなマンションで、
その横には近所の子供が遊べるような、これまた大層広い公園がある。
ぼんやりとした日差しと冷たい空気のなか子供が4、5人遊んでいる。
少し離れて様子をやさしく見ているのはきっと母親だろう。
もうなんだか、本当にやさしい日常で、なんの緊張感も無くて。
コートのポケットに手を突っ込んで、俯く。
俺はいま何をすべきなのか。いま考えて行動しなければいけないことがあるのに、
この穏やかな空気にのまれて何も思い出せない…。
不意に、遊んでいたサッカーボールが子供の足を離れ俺の方に転がってきた。
ボールのまわりには、俺以外いない。
小さい足で急いで走ってくる子供。それを見守る母親。
俺は目線をそらしつつ、ボールを とろうろ した。
ふと
すりぬける。唐突に。
子供の体は俺になにも残さず通り。何事もなかったかのようにボールを拾い上げた。
笑う子供。子供。子供。母親。
俺は目を見開いたまま行き場のない手をおさめられずにいた。
ここは幽霊団地…?だって今あの子供は俺の体をすり抜けたんだ。
じゃぁあの子供もあの子供もあの子供も―――。
あの母親も ――― ?
糸が切れたように思い立つと、真っ直ぐに駆けだした。
母親に向かって一直線に。
目の前に立ってみる。
母親は、俺を通して子供たちを見守っていた。
「――――…あの」
反応などない。
「マサキーそろそろ帰るよ、ボール持ってきなさい」
「えー~」
「え~じゃないでしょ」
母親は立ち上がって、自分の子供の方に歩いていった。
目の前にいた俺は すりぬけた まま。
いま 何よりも つよく
頭の中で強く否定していることがある。
考えようとすると頭の後ろらへんが掻き回されるようで。
どろどろと何かがとけだすようで。
けれど 俺は どうしてだか
あの月を覚えているんだ。
俺は死んだの か
「ユウキお帰りなさい。今日部活なかったの?」
その母親は別の方向を向いてそいつの名前を呼んだ。
「ユウキ」と称された人物は軽く返事をすると
スタスタとオートロックのマンション入り口に向かってゆく。
俺は妙に覚めた頭の中でそいつの顔を何気なく見つめた。
ごつごつした石…あれはコンクリートの固まり か何か。
逆光がやけに眩しいかったから、きっと満月だった。
忘れない。忘れてなんかいない。
知らない。
だけど憶えている。
あの時逆光の中かすかに見えた。ふるえる涙と見知らぬ幼い顔。
俺 を 殺した のは
こいつだ 。
2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | if you were here
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