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2025.07.18 | Comments() | Trackback() |

箱庭1 (アラゴルン意志弱すぎバージョン)

別にいいのだと思っていた。

この長く永い永久の命をすごすのに、
魂をけずる行為さえ私には暇潰しに思えた。

自分以外の生命そのものにどこか疎外感を感じずにはいられなかった。

だから[あれら]と[私]は違うものなのだ と思うことで



私は




*****



それは少し肌寒い日だった。


私は父からの預かりものをエルロンド卿に渡すために裂け谷へ来ていた。
いつもどおりならば、私が来たという報せを聞きエステルが飛んでくる

今日はなぜだか遅かった。
少し顔色もわるく見える。
しかし本人は義理父の手前つとめて明るく振る舞っているようだった。
エルロンド卿は大変心配性だから。
だから私もあえて口には出さずにいた。
あの子がそう気遣っているなら今ここで言うまい と。



別に気に止めなければ気にならない程のささいな変化。

エルロンド卿がその場を去った後、
「どうした?」と小さく尋ねたが、エステルは顔を横に振るだけだった。

私を避けているようにもみえた。



苛立ちと共に少しこころが傷んだ。





****


ガタン。




その夜。私は本を読んでいた。
静かな空気を破り去るようにドアをあける音がする。

さして驚きもせず本から扉へ目線をうつした。


「エステル?」


扉を開け、入って来たのは昼間どこか調子の悪いようだった、
まだ幼さが残る人の子だった。
が、昼間に増して顔色が悪いように見える。
なにかに怯えているようにカタカタと震えている。
尋常ではないその様子に私は彼にかけよった。
肩に手を置いて覗きこんでみる。


「やはり…何かあったのかい?話して───」






瞬間
私の視界は反転した



背中にはつめたい床の感触がある。
目の前…というか私の頭上には、
さっきから苦しそうに顔を歪めている子ども。
とつぜんの衝撃に見開いた目を優しく細める。


「エステル…重いよ…」


頭をなでる。

突然なにかが弾けたようにエステルは大きな声で言い出した。



「俺は────どうしたらいいか判らない…!!」

「どうしたら──っ」

「だってこんな…きっと俺はオカシイんだ──」




「エステル…!まってくれ…おちつこう…私は全て聞くから…」


あまりにも切実に訴える彼をとりあえず落ち着かせようと頭を抱えた。
エステルは一瞬体をびくつかせた。
声は、ぴたりとやんだ。
しかしエステルの体の震えはまだ少し残っている。



「エ───…」




「───あなたがすきだ」













「 あなたを ダ キタイ 」






ゆっくりと。

頭を抱えていた腕を放す。

見開いた目をおさえるようにして片腕を自分の胸元に寄せた。



「それが……君が今日私を避けていた原因…?」


彼は俯いたままそれ以上なにも喋らなかった。












ひどくさめた感情の自分がいる。

目の前の人の子は、きっと自分が異常なのではないかと相当な時間くるしんだのだろう。

その原因が私なら



それだけで


この子が





わらってくれる なら









「いいよ…もう悩まなくていいんだ」







「私をあげる───だから わらって──」






彼の額にくちづけた。



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2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | 指輪

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