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2025.07.18 | Comments() | Trackback() |

箱庭2

後を引くこの思いは






「………―っ…が……ぇ」


真夜中にあまりにも不愉快な音。
レゴラスは先刻エステルの部屋を彼に気付かれないように出た。
そして自分の部屋に戻るやいなや口から吐きだした。
今日口にしたものがもう原形をとどめていない。
胃液まで全て吐き出したかのような勢いで咳き込む。
ようやく落ち着いた時また小さく咳をした。

最近はこんなことばかりだ。


はぁ と溜息をついた。

ときどき堪え切れない。気分がいいときは大丈夫なんだが。



彼の熱を知る度に彼に触れる度に降り積もる「何か」。
それに耐え切れないのか体は拒否し続ける。


一体なんだというのか



彼を拒絶している訳ではない。それは分かる。
なのに
なぜ





体の振るえもとまらない…。


*****



「貴方はかわってゆくね」


久しぶりに会ったエステルの背中にポツリと問い掛ける。


最後にあってから1週間ぐらいだろうか
最近時間の流れがさらに麻痺しているのではないかと思う。
それは遅く感じるようになったのか
それとも




ねぇそれは どういう事?




「背がのびた」

「それは…喜んだ方がいいのか?」


彼はテラスのソファーに座っていた私の後ろに立ち、私の髪をもてあそんでいる。


「なぜ?自分が成長したということでしょう」

振り返り少し上目に見つめた。
サラリと髪が揺れた。


「君は嬉しくなさそうな顔をしている」


額をあてられ、人の温かさを感じ少し目を細める。


「…………そんなことはない。本心だよ。君が頼もしくなるのは望ましい事だ」

「もしかしてもう背で君をぬいた事を怒っているのか?」


「……そんなの今更でしょ?」




私は呆れたように失笑すると啄むように彼の頬に口ずけた。


「いつから なんて忘れたな」


私からのキスに驚いたような顔をしつつも
恥ずかしくも嬉しいといった表情で前屈みになり私の額に唇を落とす。
座っていたソファーが音をたてて少し軋んだ。




*****


ギシ。

いつものように彼に気付かれないようベットから出る。
エステルは終わったらすぐに寝てしまう。
だから起こさないようにといつも神経を使って抜け出さなければならなかった。

しかし私は彼の寝顔が好きだった。

除きこむその瞬間が楽しくて仕方がなかった。


でも


今は抜け出さなければならない。
彼の部屋を私の吐瀉物で汚す訳にはいかない。

ドアをパタリと閉めると、途端に吐き気が襲った。
這ってでも自分の用意されている部屋に戻ろうとしたが、
耐えきれず床を汚した。


日に日にその重みが増している気がする。
蓄積されるドロドロとした思いを押し出されるようで。

あぁ




汚した床を服で拭う。
何度も何度もこすってははがれない。それは人の子の痛みのようで。



苦しい



でも涙はどうしようもなく




どうしようもなく出て来てはくれなかった
















このこびりつくような痛みの名前を私は多分知っている。




いえない



いえないんだ








好き

とか



大切





の分だけ降り積もる。




君に言ってはいけない



いけない



そんな



気がしていた


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2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | 指輪

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