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ネタ帳
頭よりも身体が先に動くのを感じた。
そうこういうのをなんと言ったっけ。反射神経?
俺は何も考えず少年の前に立ちはだかった。
俺はもう死んでいるというのに反射神経もくそもあるというのだろうか。
馬鹿な話だ。
そもそもこんな非凡な出来事をなぜだか俺は頭で理解している。どういうことなのか分からないが。とりあえず俺はここにいて、意識があって、そして考えている。
あぁ
思うだけで意識がちぎれそうだ。やめよう。
今俺にとって直視すべきは恐らく昨日の夜俺を後ろから殴った、とにかく訳の分からない殺人鬼が目の前にいるという事だ。
しかし、俺は 困惑した。
その殺人鬼はあまりにもあどけなさが残る
少年だった。
中学生ぐらいだろうか。
そこら辺にいそうでいなさそうな妙な雰囲気を醸し出しつつもやはりそこら辺にいるような。
とにかく ごく平凡な少年だったのだ。
「・・・・・・?」
言葉を出せず躊躇していると、殺人鬼は「鬱陶しい」が混じった顔で不思議そうに俺を見つめた。
そして何事も無かった風に目線をそらし俺の横を足早に過ぎて行く。
ビク っと身体が強張る。
うとうとしている時に無理矢理目覚めさせられた時のようなあの身体が引きつった感じ。
動けない。
何か言ってやりたいのに。
なんで
あぁでも聞こえないかもしれないなぁ。
なんだっけ。
あぁ そうだ
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・あれ?
「お前 俺が見えるの か?」
その言葉を聞き、さぞかし得体の知れない物を見る目つきで俺を一瞬見た後、殺人鬼はさらに歩くスピードをあげた。
聞こえている。
こいつには俺が見えるし声も聞こえるんだ
こんな馬鹿にした話ってあるか。
どうして―――。
どうしてこいつなんだ?
ただこの訳の分からない。あの世の行き方だって分からない浮遊霊みたいな状態から抜け出したくて
この機を逃したら俺は、俺はずっと
そんな縋るような思いで
そんな縋るような思いを押しつけなきゃいけない相手が
なんで
「待てって!俺幽霊なんだってば」
そう言って。かけより。
少年のからだに手を通してみせる。
「―――――っ」
その驚きとも恐怖とも戸惑いともとれない複雑な顔の殺人鬼を見て。
「俺 幽霊」発言は少しぶしつけだったかと反省した。
あと、少し笑ってしまった。
その反応がとてもとても普通で。普通すぎて
こんな奴に殺されたんだ
俺は
*
「本当に幽霊・・・?」
殺人鬼はさっきより多少少年らしい表情を浮かべながら、俺の身体に腕を通したり透かしたりしている。
なんだか慣れないその行動に気持ち悪さを感じながら漠然とした思いで彼を見ていた。
「あ――・・。本当。初めて見たよ。」
「こわくないのかお前。不気味 とか」
ふ っと。
少年は俺を見上げていた顔の角度を少し下げた。
滲み出ていたあどけなさが消える。
まるで
この少年にはフィルターがあるみたいだと思った。
「会ってみたかった。」
「え?」
「・・・本当だったんだ。そっか幽霊はいるのか」
少年は冷めた瞳のまま また俺の身体に掌をすかした。
何を確かめているのか。俺の身体に透けた腕を細く見つめてはやけに大人びて微笑む。
その容姿に見え隠れする中身との激しいギャップ。
直感的な予感が嫌にしみてくる。
人を簡単に判断しちゃいけないけど。
わかってる けど
あぁ。
どうしようかな。
俺
多分
こいつ嫌いじゃない
唐突に。少年は俺越しにどこかを見てマズそうな顔をした。
振り返ると彼の母親であるらしいさっきの女性が不振そうな顔でこちらをチラチラと見ている。
少年は自分にしか俺が見えていないこと、自分がいまとても怪しい行動をとっていることを悟ると慌ててまたマンションの玄関へ歩き始めた。
「こっち来て。何処から来たの? 行く 所 あるの?」
振り向きざま、気持ち小声で俺に冷たく言い放つ。
俺は 無言のまま足を少年の方へ動かした。
ひとつ 。 わかっていること。
そして何故だか俺にはわからないこと。
こいつは
こいつは俺を見てもなんの動揺もみせない。
言葉ひとつ乱さない。
つくっている訳じゃない。
それは 分かる
何故だ
浮かぶのは疑問詞ばかりだ。
何故俺はここにいる。
何故俺は見ず知らずの他人であるこいつに殺された。
何故こいつは俺をおぼえていない。
何故こいつにだけ俺がみえるんだ。
俺が―――。
幽霊である自覚など きっと ない。
ただ理解はきっとしているけれど。
だってこんなにも意識がはっきりしていて自分で考え自分で意志をまだ持っているのに
どうやって死んだなんて思えるんだろう。
けれどきっと俺は死んだのだ。
自覚などなくとも。どうしても消えないものがある。
それが俺に、他人事のような視点で己の死を確信付かせるんだ。
どうしても
人は自分の死には疎いもんだ。
どうしてだろう
涙もでてこないんだ。
少年がオートロックを開けている間に外を見上げると、黄色にそまった銀杏の木が堂々と公園の真ん中に植え込んであった。
その時妙に印象に残った景色も、違和感だったのだと知る。
「今日・・・・10月・・何日だって ・・・?」
2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | if you were here
「あやまりたかっ た」
後ろで人がざわめき始め、何か言っている。耳につく甲高い声。
街の効果音と混ざりとても煩い。
重力にしたがって流れる涙を
僕は必死でとめたかった。
見せたくなかった。
君なんかに泣き顔見られるなんて屈辱だ。
「あやまりたかった ん だよ ―――」
やめろ。
今更目を閉じないで。
凍った瞳をやわらげないで。
憎んだ口元で微笑まないで。
僕はひとり
馬鹿みたいにないて いた
[ wish you were here ]
---------------
ドンッ。
唐突に
音とも言い難い、鈍く耳の奥に残る衝撃が後頭部にひびく。
勢い良く前に倒れ込んだ、膝だけがなぜか無性にイタかった。
2月27日、10:28。(さっき時計見たばかりだから正確)
俺は多分きっとさっきバイトが終わって家につこうとしていたはずだ。
今は冬だから凄くさむい。息も白い。
だから急いで家に帰ろうと―――
違う…こんなこと考えている場合じゃないんだ。
予想外な突然の出来事に直面すると、人は変な方向に思考がいくと聴くが…困った。
一瞬なにがなんだか分からなかったけど、こうして頭からドクドク流れ出る
自分の血液を見ていると。やっぱり痛いかもしれない。あ、痛いや。
ついでに呼吸もままならなくて苦しいかもしれない。
どうしようやっぱり痛い…。
そんなこと頭で何度も繰り返し呟いていると、
背後から俺を殴ったであろう人物の気配がした。
ジャリ―― っとにじみよる音がする。
背筋に何かがはしる。そのときになって初めてその存在に「恐怖」をおぼえた。
俺の後頭部から紅いモノが生々しく流れ、止まることを知らない。
それでも手の甲で必死に押さえる。
倒れた時の膝の痛みを感じながら、俺は振り返った。
冬の夜空に点在する星と月がいつも以上に眩しく見えて
思わず見開いた目を細め る。
「―――――」
ドンッ
俺の視界はその音でとぎれた。
あぁ
俺の人生はこんなものだったのか
と
生きる事をあきらめた瞬間に
俺の人生などもう終わるのだ
せめて最後は笑ってやりたかった
笑い飛ばして やりたかったのに
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どのくらい時間がたったのだろう。
あれから
まっしろな世界から抜け出したとき、俺は知らない場所にたっていた。
俺が俺を見た最後の記憶そのままの格好だ。
フードにファーの着いたコート、モノトーンのジーンズは少し汚れている…何故だろう。
チャンネルが切り替わるように俺には瞬きの間のようだった。
しかし空白のような記憶の喪失感がそこはかとなく時間の経過を連想させる。
知らない場所って言ったって、まぁ、人が住んでそうな団地だけど。
取り敢えずとぼとぼと歩いてみる。結構広い…というか高そうなマンションで、
その横には近所の子供が遊べるような、これまた大層広い公園がある。
ぼんやりとした日差しと冷たい空気のなか子供が4、5人遊んでいる。
少し離れて様子をやさしく見ているのはきっと母親だろう。
もうなんだか、本当にやさしい日常で、なんの緊張感も無くて。
コートのポケットに手を突っ込んで、俯く。
俺はいま何をすべきなのか。いま考えて行動しなければいけないことがあるのに、
この穏やかな空気にのまれて何も思い出せない…。
不意に、遊んでいたサッカーボールが子供の足を離れ俺の方に転がってきた。
ボールのまわりには、俺以外いない。
小さい足で急いで走ってくる子供。それを見守る母親。
俺は目線をそらしつつ、ボールを とろうろ した。
ふと
すりぬける。唐突に。
子供の体は俺になにも残さず通り。何事もなかったかのようにボールを拾い上げた。
笑う子供。子供。子供。母親。
俺は目を見開いたまま行き場のない手をおさめられずにいた。
ここは幽霊団地…?だって今あの子供は俺の体をすり抜けたんだ。
じゃぁあの子供もあの子供もあの子供も―――。
あの母親も ――― ?
糸が切れたように思い立つと、真っ直ぐに駆けだした。
母親に向かって一直線に。
目の前に立ってみる。
母親は、俺を通して子供たちを見守っていた。
「――――…あの」
反応などない。
「マサキーそろそろ帰るよ、ボール持ってきなさい」
「えー~」
「え~じゃないでしょ」
母親は立ち上がって、自分の子供の方に歩いていった。
目の前にいた俺は すりぬけた まま。
いま 何よりも つよく
頭の中で強く否定していることがある。
考えようとすると頭の後ろらへんが掻き回されるようで。
どろどろと何かがとけだすようで。
けれど 俺は どうしてだか
あの月を覚えているんだ。
俺は死んだの か
「ユウキお帰りなさい。今日部活なかったの?」
その母親は別の方向を向いてそいつの名前を呼んだ。
「ユウキ」と称された人物は軽く返事をすると
スタスタとオートロックのマンション入り口に向かってゆく。
俺は妙に覚めた頭の中でそいつの顔を何気なく見つめた。
ごつごつした石…あれはコンクリートの固まり か何か。
逆光がやけに眩しいかったから、きっと満月だった。
忘れない。忘れてなんかいない。
知らない。
だけど憶えている。
あの時逆光の中かすかに見えた。ふるえる涙と見知らぬ幼い顔。
俺 を 殺した のは
こいつだ 。
2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | if you were here
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