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2025.07.18 | Comments() | Trackback() |






「 は? 」





何か・・・もっとこう・・・
言えたんじゃないだろうか。



思わず落とした缶を勿体ないと
思う余裕さえ無かった。

ただ、呆然と見つめた。



あいつは笑顔のままだった。






「別に隠さなくていいですよ!俺知ってますから」




心なしか、最後の言葉を発する時
藤代の声が低くなったような気がした。





「----・・・・・・」






別に・・・隠すような事じゃないけど・・・。


何故かこいつの笑顔に圧迫感を憶え
喉からうまく声が出ない。

って、いうか。


缶を落とした時点で「ハイそうですよ」って
言ってるようなもんだろ・・・。







「-------ぁ」



何か言おうとした瞬間、俺を呼ぶ声が聞こえた。






「三上。藤代も一緒じゃないか」



「渋沢・・・」





不意をつかれて一瞬焦る。

が、何とか悟られないように明るく応えた。
・・・つもりなんだが・・・


軽く手を上げながらゆっくりと
こちらに歩み寄る。


ふと藤代を見ると、






・・・寒気が  した。








嫌悪、とも、無気力、とも言い難い。


とても とても 冷静で


とても とても つめたい 目





ただ、間違いなく、藤代は渋沢を見ていた。






「もうそろそろ昼休み終わるぞ。教室戻らなくていいのか?」


「お前は?」





聞き返すと渋沢は、
ちらっと藤代を見て続けた。



「俺はちょっと藤代に用あるから。後から行くよ」




だから、さき行ってろって笑顔で
渋沢は俺の背中を押した。


俺は藤代を見やる。

あいつは俺の視線に気がつくと
いつもの顔で笑った。




俺はそれを勝手に「また今度」って言ってると解釈して、


少し重たい空気を感じながら教室に戻った。













++***++





「授業・・・始まってますよ」




驚くほど冷めた声で
からかう様に言う。


それがこの人の逆輪にふれる事など判っていた。




先輩は周りに人気がなくなったのを空気で確認して
一瞬、俺をすごい形相で睨んだ。




「どういうつもりだ」




「何がですか?」





にっこり笑って言うと
思いっきり壁に叩き付けられる。

少々の痛みを感じていると
頭の両側に腕が見えた。


正面には顔。





「三上には関係ない」





あまりにもおかしくって吹き出してしまう。





「・・・関係ない?さっきの言葉、そっくりそのまま返しますよ先輩」





真っ直ぐ彼を見ると
腕を強引に振り払った。





「どういうつもりで、俺を抱いたんですか」




「-----------」




先輩の 表情が引きつる。





おかしくって 失笑する





「暇つぶし?」




皮肉のように片頬を歪ませて
息があたるぐらいまで顔を近づけた。


嫌な奴だとは思ってたけど



俺ってこんなに嫌な奴だったんだ・・・




怒りと皮肉と後悔と

いろんなモノが交差する。






次の瞬間、喉元に圧迫を感じた。


爪が食い込む。

でも、息はできる。








「理由。言って欲しいのか?」







冷たくて

凍り付くような


でも、その奥に秘めた怒りがある




目が笑っていない。












首の痛みが引いてゆく。



ゆっくりと手を離すと

先輩は振り返らずに校舎へ消えた。









 
 『 生かさず殺さず 』
















何故か俺は



そんな言葉を思い出していた。













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2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | モラトリアム

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