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ネタ帳
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部活も終わった
放課後
ズカズカと俺は寮のろうかを不機嫌丸出しで歩く。
途中でときどき出逢う下級生は、
俺の顔を見るやいなや隠れるようにして挨拶してくる。
それが俺のイライラをいっそう強くした。
ある部屋の扉の前でとまる。
すぅ っと深呼吸して気持ちを落ち着けた。
ガチャリ と重たくドアが開いた。
「あれ?三上先輩?」
間抜けな声を出して
これまた間抜けな顔で出迎えたのは藤代だった。
俺の訪問はほんとうに予想外だったようで
ベットの上で雑誌を読んでいた。
「お前・・・・・・足怪我したって・・・」
「あーーー。大したことないっすよー軽い捻挫です!捻挫!」
それを聞いた瞬間
がくーーーーーーーーーーっと膝の力が抜ける。
俺は軽くその場に座り込んだ。
「おま・・・・・・ほんと ・・・ あーー・・・ 」
馬鹿馬鹿しすぎて怒鳴る気も起きない。
「え?何々?俺今日体育の授業で捻挫したから部活でれないって伝えましたけどー」
「いや ・・・・ うん まぁ 黙れ・・・ 」
よくある話だな。
足を怪我したとは聞いたけど軽い捻挫だなんて聞いてない。
というか俺の所まで伝わってこなかった。
俺はただ藤代が来ない理由を下級生に尋ねると
どうも足を怪我したようだ
とか
包帯を巻いてた
とか
かなり派手にやってた
とか
そんな曖昧な返事しか来ず
誰に聞いた?って聞くと
さぁ?
としか帰ってこない始末。
あの藤代といっつも一緒にいる奴は今日めずらしく休みだったし。
俺はゆらゆらする不安をどうにかするため
わざわざ藤代の部屋まで自分で出向いたのだ。
「しんじらんねーなお前・・・。仮にもサッカー部の人間が授業でそんなちんけな怪我すんなよ・・・」
そう言いながら藤代のいるベットの方へと移動した。
軋む音とともにそこに腰掛けると
藤代は少し姿勢を正して雑誌を脇に置いた。
「ちょっと 色々考えてたらぼけーっとしちゃって~」
へらへら笑う。
あぁ もう ほんとしょうがねぇなぁ こいつ。
俺もなんでこんな奴の心配してんのかな。
「何考えることがあんだよお前」
俺も皮肉っぽくへらへら笑いながら
軽く
軽く その言葉を発してしまった
あとで 死ぬほど後悔することも 知らないで
「三上先輩をどうやって犯そうかなーー と思って。 」
いつものように 鈴を振るような声で
目の前のこいつは にっこり 微笑んだ。
笑いかけた顔が ひきつる。
「 はぁ? お 前なぁー。俺を犯そうなんて100万年はや」
こおった空気が いたい
なんだこれ
なんだこれ
いま こいつ 笑顔で なに言った ?
「あーそういう反応ですか~。いや、いたってかなり本気ですよ。これでも」
自分の膝に頬杖をついて
目をほそめて笑う。
まるでどうってことないような声で快活に喋る。
こわい
だれだ これ
「な に ・・・ ・ 言って」
「だって渋沢先輩 先輩のこと大好きなんですもん」
腕をひっぱられて
俺の視界が反転する
ベットのスプリングが激しく歪んだ。
こわい
こわくて
声もでない
「それにね」
また
困ったように笑いながら
「 俺も 先輩のこと大好きなんだよね」
俺は
目を 見開く
「 先輩がすき。 でも 俺は渋沢先輩が一番好き。
なのに
先輩の一番も 渋沢先輩の一番も
俺じゃない なんて 」
ぽた
ぽた
生温かいしずくが
ほほに伝う
「 俺 たえられないよぉ そんなの って ---- こんなことって さぁ 」
押さえつけられている腕に爪が食い込む。
鈍い痛みに顔をしかめるけど
俺は
「 だから 壊すんだ ぜんぶ壊すんだ
ねぇ?
わかるでしょ? 先輩 」
俺 は
なんにもわかってないよ 藤代
おれは なんにも わかってなかっ た
お前の痛みとか
闇とか
俺の些細な行動も
俺がお前と過ごしてた時間も
お前をズタズタにする材料にすぎなかったんだ
そうだったんだ
お前の笑った顔がみたくて
そんな自分悔しいから認めたくなかったけど
昼休み
他のダチよりも優先して会ってたあの瞬間も
お前にとっては 地獄 だったの ?
「 ・・・ いいよ。 お前の気がすむなら 壊せよ 」
その大きい目から次々とこぼれ落ちる涙を
頬を撫でるようにすくった。
泣きそうになる自分がいるけど
泣いてはいけない気がした
今は 俺が 強くなくてはいけないところだ
顔を不器用に歪めて 無理にでも笑って
唇を噛みしめる
藤代は俺が言葉を発した瞬間 ビクッと 体を震わせた。
涙はやっぱり止まることは なくて
ごめんなさい
ごめんなさい と
あいつは 俺に謝りつづけてた。
++***++
もうあたりが暗くなり始めた夕方。
廊下の窓から見えるそのオレンジと紫が混ざったいろ。
もう どこもかしこも痛いけど
いつもより酷く綺麗に感じる。
来るときには短く感じたこの廊下が
今はどこまでも続いてるような気がするなぁ
体が重い。
「三上・・・?」
聞き慣れた声に顔を正面に戻すと
キョトンとした顔の渋沢が立っていた。
なんだか凄く懐かしい 気がする
お前が
なつかしい
ゆっくりと 歩み寄って
肩に顔をうずめた。
軽く 渋沢に体重をあずける
「三上 ? どうかしたのか ・・・ ?」
やさしい声が聞こえるなぁ。
あぁ。 うん。
俺 この声がすきだ。
何にも言わなくても
抱きしめてくれるこの腕が好きだ。
わかっていても言わないでいてくれる
こいつが 好きだ。
いまは もう ただ
俺の体中 渋沢の匂いに染まればいいのに とか
そんな下らないことを思って
少し 泣いた 。
そうだなぁ もう あいつが
俺に笑いかけることは ないんだなぁ
そう考えると、
俺の頭はなんだか 後ろのあたりが
ガンガン鳴って
涙が とまらなかった
2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | モラトリアム
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