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2025.07.22 |





「お早うございます!」



「・・・・・・あぁ・・・おはよう・・・」





さすが先輩。
俺、結構はやく来たつもりだったんだけど。


部室には俺と先輩だけ。


ホントは今日。

自分の意志でさぼろうと思った。


でも、そうやって休んで
「で、次は?」と考えたんだ。

明日も明後日も明々後日も
休む事はできる。





ほうりなげる 事だって できる。





なんならサッカー部やめる?



そんなの考えられない。
できる 訳無いじゃん。



だから   さ。





「早いですね~。俺絶対一番だと思ったのにな~」





どんだけ 複雑な顔されても。


考えた返答しか返ってこなくても。





「・・・・・・藤代・・・あのな」





いいんだ。




「先輩。この前言ったこと、訂正します」





決めたから。





「やっぱり、俺先輩に想われたいです」





我が儘。

欲望。




いいじゃないか




俺が 生きてる って事でしょ?



















「先輩。俺を好きになってくれませんか?」












++***++




救いを求めて



旅立つことを


逃げることだと 罵るの なら





君を 撃ち落として





引き裂いて








もっと もっと







愛したのに ・ ・ ・




++***++





ガチャ。





ドアを開けたら、竹巳はもう着替えて本を読んでいた。

けど

俺の帰った音を聴いて、
本に目を向けたまま「お帰り」と言った。



俺は鞄を落とすように置いて

しかめっ面で抱きついた。




「・・・・・あのぉ・・・・・・」



「・・・・・・・・・」




「・・・・・・読めないんだけどー・・・」



俺は余計腕に力を込める。


呆れたように竹巳は溜め息をついた。
顔は見えない。

でもきっと呆れてる。


「・・・・・・・俺普通だったよな」



「・・・・何が?」





「・・・俺 今日 普通だったよな?」




二度目の言葉はどこか悲鳴のようだった。



泣いてない。

泣いてなんかいない。


掠れた 声で問う。









「・・・・・・・うん」





かけられた弱い言葉と共に


やさしい手。



ぽんぽん。 と 二回。



頭をなでられた。









それが  痛くて





どうしようもなく       


















いたくて。








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2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | モラトリアム




「・・・・・・・・・目、覚めたか・・・?」




ぱん。


と 軽く。ホントに軽く

頬をたたかれる。


俺がキョトンとしてると





「俺はこんな奴なんだぞ。・・・・気の迷いだ。やめておけ」





さっきとはまるで別人の顔。

やわらかく でも何かを飲み込むような

はにかんだ感じに




微笑んで




「・・・・・・・・・」




疑問。



乾いた 怒り。





「気の迷いって・・・何ですか」





無意識に唇はふるえた。







「・・・・・・・・・」




瞬間、 先輩の顔がひどく ひきつった。


 あぁ こいつは   本気なんだ   と






先輩は  なにも言わずに

いや もしかしたら何も言えなかったのかもしれないけど





放課後の虚しい教室から 出て行った。










++***++





「藤代」



ある昼休み



意外な声。


小さく
小さいけれど

いつもと ちょっと違う声。




「三上先輩」




真っ直ぐ見据えられてたじろいだ。

普段の三上先輩じゃない。
気がする。


・・・・・・怒ってる?



なんでだろ・・・

俺なんかトチったっけ・・・?




「ちょっと来い」




そう言って 自分はスタスタ行ってしまう。


取り残されるのも なんなので
ついてった。



逃げ出したい・・・・・・

・・・身に覚え無いんだけ・・・・・・ど



どうだろう。



あー。
・・・・・・やっぱ俺何かしたかも。

・・・したかなぁ・・・・・・




人通りのあまり無い廊下まできて、三上先輩はとまった。





「お前。今日どうしたんだよ」






・・・・・・・。



・・・・・・もしかしなくても心配されてますか俺。





この人 なんて顔をしてるんだろう。




「え・・・あ・・・すみません。朝練さぼって」




さぼった と言うより寝坊したんだ 今日は。


昨日はなんだか
まったく眠れなかった。

考えるのをやめようとするとよけい眠れない・・・


悪循環。



何故か竹巳は今日にかぎって
俺を起こさなかった。
いつもなら意地でもたたき起こすくせに。

理由を聞いたら竹巳は曖昧にきちんと答えた。

それが かえって不自然で。




「理由はきかねぇよ」




はっ  と。



息を喉に戻した。

全てを見透かされたような気がした。

三上先輩は時々。
こういうの があるから こわい。

人の目を見て喋る。
だから こわい。





「今日のは・・・実は寝坊しただけなんですよ。だから」





言葉に詰まる必要なんて ない。


大丈夫って言えばいい。





「大丈夫です」





わらって。











「・・・だからお前は馬鹿なんだよ」














・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?





壮大に溜め息をつかれた。

皮肉と言うか何と言うか
皮肉じゃないけど



どう表現しよう・・・・・・不器用・・・かな・・・?


普段なら少しの怒りを憶えたけど
今は、何故か。


その言葉の真意がわかったような気になった。





「いいか。そんな見え見えの顔されても気持ち悪ぃんだよ。笑いたくなきゃ、笑うな」





何で俺怒られてんのかなぁ・・・




でも・・・・・。



多分、俺いま嬉しい。

よくわかんないけど。うれしい。





「・・・・・・呼び出して悪かったな。それだけだ」





なんか言おうと思って。

口を動かしたのに声にならなかった。



気持ち早歩きで先輩は去っていく。
俺は

先輩の背中が見えなくなるまで、ずっと






ずっと 立ってた。





2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | モラトリアム

ぐるぐる おちる



堕ちてゆく



きみの もとへ




口笛なんて




なんの いみも ない のに









++***++





夕焼けがほんとうにキレイだった。


写真にとっておきたいと思った けど
思うように動かない。
何がって、カラダ。だから

この瞳にこの胸に
残しておこうと想ったんだ。
薄いカーテンの向こうから微風を感じて。
寒い というよりは 涼しい。
気持ちいい というよりは 忌々しい。


どこまでいつまで


ここにいればいいんだろう ・・・


あなたは帰ってこないって






俺しってるのになぁ ・ ・ ・















パキ。






「ったー・・・・・・」




手をついた先にはガラスがあった。
鈍くて 細かい 痛み。
知らなかった訳じゃなくて
いっぱいある。
いっぱいって言うか・・・・・・まぁ・・・そこら中にいっぱい。
静かなただ静かな部屋にいっぱいある。

じわじわと広がる紅を
俺は懐かしく感じる。
そんな自分に笑えた。



嘲笑った。





++***++









「先輩。俺先輩の事すきですよ」








曇った顔つき。困惑して取り残された。
ある意味笑えた。


俺・・・言うタイミング間違えた・・・?



言っちゃいけなかったかなぁ・・・



なんて思ってみたり。








「・・・・・・・・・・」







あ、やっぱりちょっと笑えるかも。


失礼かな。
誤解されそう。


だって俺が笑えるんだよ。







「いいです何も言わないで。俺が勝手に好きなだけですから」







うそだ。

ほんとはちょっと期待してる。


だめだ


なんて思っても



きっと







「・・・・・・・・・・」






ガタン。






「てっー・・・」






唇の真ん中から血が紅く滲んだ。

舌でなぞると


鉄の味と。
歯形がくっきり。



かなり けっこう 以外と



いたい。凄く。






「先輩・・・・・・・・?」






あなたは 笑顔。



どんな時だって




こわい ぐらいに













「・・・・・・こんな事されても?」
















こわい   ぐらいに











2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | モラトリアム

頭よりも身体が先に動くのを感じた。
そうこういうのをなんと言ったっけ。反射神経?

俺は何も考えず少年の前に立ちはだかった。



俺はもう死んでいるというのに反射神経もくそもあるというのだろうか。
馬鹿な話だ。
そもそもこんな非凡な出来事をなぜだか俺は頭で理解している。どういうことなのか分からないが。とりあえず俺はここにいて、意識があって、そして考えている。

あぁ

思うだけで意識がちぎれそうだ。やめよう。


今俺にとって直視すべきは恐らく昨日の夜俺を後ろから殴った、とにかく訳の分からない殺人鬼が目の前にいるという事だ。





しかし、俺は 困惑した。



その殺人鬼はあまりにもあどけなさが残る
少年だった。


中学生ぐらいだろうか。
そこら辺にいそうでいなさそうな妙な雰囲気を醸し出しつつもやはりそこら辺にいるような。
とにかく ごく平凡な少年だったのだ。





「・・・・・・?」


言葉を出せず躊躇していると、殺人鬼は「鬱陶しい」が混じった顔で不思議そうに俺を見つめた。
そして何事も無かった風に目線をそらし俺の横を足早に過ぎて行く。
ビク っと身体が強張る。
うとうとしている時に無理矢理目覚めさせられた時のようなあの身体が引きつった感じ。


動けない。
何か言ってやりたいのに。
なんで
あぁでも聞こえないかもしれないなぁ。

なんだっけ。



あぁ そうだ










・・・・・・・

・・・・・・・・・・・あれ?
















「お前 俺が見えるの か?」




その言葉を聞き、さぞかし得体の知れない物を見る目つきで俺を一瞬見た後、殺人鬼はさらに歩くスピードをあげた。





聞こえている。




こいつには俺が見えるし声も聞こえるんだ




こんな馬鹿にした話ってあるか。


どうして―――。

どうしてこいつなんだ?

ただこの訳の分からない。あの世の行き方だって分からない浮遊霊みたいな状態から抜け出したくて
この機を逃したら俺は、俺はずっと
そんな縋るような思いで
そんな縋るような思いを押しつけなきゃいけない相手が

なんで





「待てって!俺幽霊なんだってば」






そう言って。かけより。
少年のからだに手を通してみせる。



「―――――っ」







その驚きとも恐怖とも戸惑いともとれない複雑な顔の殺人鬼を見て。
「俺 幽霊」発言は少しぶしつけだったかと反省した。


あと、少し笑ってしまった。

その反応がとてもとても普通で。普通すぎて








こんな奴に殺されたんだ

俺は








「本当に幽霊・・・?」




殺人鬼はさっきより多少少年らしい表情を浮かべながら、俺の身体に腕を通したり透かしたりしている。
なんだか慣れないその行動に気持ち悪さを感じながら漠然とした思いで彼を見ていた。



「あ――・・。本当。初めて見たよ。」

「こわくないのかお前。不気味 とか」




ふ っと。

少年は俺を見上げていた顔の角度を少し下げた。
滲み出ていたあどけなさが消える。
まるで


この少年にはフィルターがあるみたいだと思った。




「会ってみたかった。」



「え?」




「・・・本当だったんだ。そっか幽霊はいるのか」




少年は冷めた瞳のまま また俺の身体に掌をすかした。
何を確かめているのか。俺の身体に透けた腕を細く見つめてはやけに大人びて微笑む。

その容姿に見え隠れする中身との激しいギャップ。


直感的な予感が嫌にしみてくる。
人を簡単に判断しちゃいけないけど。
わかってる けど






あぁ。




どうしようかな。










多分
こいつ嫌いじゃない






唐突に。少年は俺越しにどこかを見てマズそうな顔をした。
振り返ると彼の母親であるらしいさっきの女性が不振そうな顔でこちらをチラチラと見ている。
少年は自分にしか俺が見えていないこと、自分がいまとても怪しい行動をとっていることを悟ると慌ててまたマンションの玄関へ歩き始めた。



「こっち来て。何処から来たの? 行く 所 あるの?」



振り向きざま、気持ち小声で俺に冷たく言い放つ。


俺は 無言のまま足を少年の方へ動かした。
















ひとつ 。 わかっていること。


そして何故だか俺にはわからないこと。







こいつは
こいつは俺を見てもなんの動揺もみせない。
言葉ひとつ乱さない。


つくっている訳じゃない。

それは 分かる



何故だ








浮かぶのは疑問詞ばかりだ。





何故俺はここにいる。

何故俺は見ず知らずの他人であるこいつに殺された。

何故こいつは俺をおぼえていない。

何故こいつにだけ俺がみえるんだ。







俺が―――。

幽霊である自覚など きっと ない。
ただ理解はきっとしているけれど。
だってこんなにも意識がはっきりしていて自分で考え自分で意志をまだ持っているのに
どうやって死んだなんて思えるんだろう。
けれどきっと俺は死んだのだ。

自覚などなくとも。どうしても消えないものがある。
それが俺に、他人事のような視点で己の死を確信付かせるんだ。


どうしても




人は自分の死には疎いもんだ。







どうしてだろう

涙もでてこないんだ。















少年がオートロックを開けている間に外を見上げると、黄色にそまった銀杏の木が堂々と公園の真ん中に植え込んであった。

その時妙に印象に残った景色も、違和感だったのだと知る。





「今日・・・・10月・・何日だって ・・・?」

2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | if you were here

僕の全ては あいつのものです。


僕の 全ては

あいつにあげるって決めたんです。



だから僕は

君が僕の隣で笑っていると


すごく

あやまりたくなるんだ






ごめんね



ごめんね








君とたくさん笑いあっても

君とたくさん哀しみを共にしても

君とたくさんの時間を過ごしても




僕の全ては いつだってあいつのもの。

2006.02.12 | Comments(0) | Trackback() | SEED

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